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【修了生インタビュー】 「地域看護」というより幅広い視野で仕事や活動を見ることができるようになりました。


コミュニティナースプロジェクト第6期修了生 新田 大貴(看護師)

 

◆自己紹介

出身は石川県ですが、就職を機に福井県に来ました。大学を卒業してすぐに訪問看護師になり現在3年目になります。

僕が福井に来て半年ほどの頃、福井県坂井市の竹田という人口300人程度の村に出会いました。きっかけは、あるイベントの準備で、竹田地区の介護施設の施設長と会ったことです。

その施設は元々繊維業を営んでいましたが、高齢化が進んでも慣れ親しんだ地域でこれからも過ごせるように、との町のニーズに応え、介護施設を始めたという経緯がありました。山に囲まれ自然豊かであることや、この地域、施設のあり方に惹かれ、楽しみに通うようになりました。

 

◆講座受講の動機

地域看護師として活動し3年目。今後の活動について所属するオレンジホームケアクリニックの代表と話をしていました。その時にコミュニティナースプロジェクトの話を聞きました。

最初は、竹田地区とも自分なりに関わることができていたので、プロジェクトへの参加を考えていませんでした。しかし、代表との話から「訪問看護の枠を超えて活動しているあなただからこそ、研修を受けて色々感じたことを広げていってほしい。視野を広げていってほしい」という言葉に背中を押されました。

 

また同時に、竹田地区の中で自分はどんなことができるのか?他の地域でも通用するのか?今の関わりでいいのか?と、もんもんとしていた時期でもありました。

そのようなタイミング、ご縁があったことから、全国で活動されている方の動きや、取り組み方を学んでみたい!一緒に頑張れる仲間を増やしたい!と思うようになり、受講を決めました。

 

◆受講時の実践と変化

研修を通して、竹田地区に限らず地域と関わっていく姿勢や態度、考え方を深められたと感じています。訪問看護という視点だけではなく、地域看護というより幅広い視野で仕事や活動を見ることができるようになりました。

具体的には以下のような変化があります。

 

1.つぶやき拾いから、繋がりが生まれるという視点を得た

 竹田地区では最初にもお話しした介護施設の方としか関われておらず、どう地域の方とのつながりを広げていけば良いのか二の足を踏んでいました。

そんな時、すみだ青空市ヤッチャバのフィールドワークで地域の方の「つぶやき拾い」を行いました。

 

町の地図をもとに町の好きなところについて、買い物に来ていた女性と話をしていると、「実はね、数十年ずっとここで暮らしてきたけど、慣れ親しんだ家から離れて、これからは子どもの家に住むことになるのよ」と徐々に寂しそうな表情に。「慣れ親しんだ家から離れることは寂しいことですね」と私が返すと「そう。子ども夫婦にも迷惑かけてしまわないか心配で」といったつぶやきを拾えたのです。

話のきっかけは何気ないことであっても、話をしていくうちにその方の大事にされていること、今気にされていることに話が広がっていくのだと感じました。

 

そこで、竹田地区に戻った時に意識的につぶやき拾いをやってみるとこんなことが起きました。町の歴史を聞くことをきっかけに会話が始まり「私はこんな風に過ごしていきたい」といったその人が大事にしていることにも自然と触れられるようになったのです。

また、地域の方と話すうちに、自分自身が純粋な関心から地域のことを知りたい、あなたのことを知りたいという姿勢で向き合うことが大切であると気づくことができました。

 

そんな風につぶやき拾いをしていると繋がりも徐々に広がり、お寺のお母さんと仲良くなりました。その繋がりから地域の方を集めて開催する音楽イベントのお手伝いをすることにもなりました。

ここ2か月くらい竹田地区に行けていなかったのですが、お寺のお母さんが「新田さんが次はいつ来るかなと楽しみにしていたよ」と知人から知らされました。自分を気にかけ待ってくれている人がいるのだと思うと本当に嬉しくなりました。来週には、またお寺を訪ねる予定です。

 

元気で楽しく暮らしてもらいたい、そう思い始めたつぶやき拾いでしたが、僕の方こそ嬉しく元気になる関わりをしてもらえ、繋がりが生む価値を経験できた出来事です。

私はこれからも、コミュニティナースプロジェクトを通じて得た、何気ない会話から自然な形で気持ちを引き出せるような関わり・繋がりを、緩やかに続けていきたいと思っています。

 

2.強みを自覚し支え合う仲間、講座卒業生、住民さんとの出会いを得た

 研修を通して12人の仲間、講座卒業生、フィールドワークで住民さんと出会うことができました。出会いを通じて新たに気づくことも多くありました。 

 

雲南市でのフィールドワークで出会った住民さんから「あなたはなんだかお話がしたくる雰囲気がありますね。孫みたいだわ」と伝えてもらい、自分が専門家としてではなく、孫のような身近な立ち位置を自然にできていることに気づくことができました。

素直に謙虚に対応する姿勢、地域の方が専門職だと身構えることなく肩の力を抜いて関われる、そんな存在であることが、自分が大事にしたいことだと気づくことができました。またプロジェクト受講中には同期や卒業生から「大ちゃんの強みこうだね!」と客観的に言われることで、自分の強みを改めて知ることができました。

 

仲間とのエピソードで印象的なことがもう一つあります。

雲南市でのフィールドワークで、上記でも触れた「つぶやき拾い」を同期と一緒に実行していた時のことです。僕は気軽に話ができる場を作り、その中からつぶやきを拾いたいと思い、何かを食べたり飲んだりしながらゆっくりできるよう、懐かしのお菓子や駄菓子を用意して場を作ったのですが思うようにいきませんでした。

 

そこで、周りのメンバーの活動に混ぜてもらうと、その地域の地図を準備して「私たち普段は別の地域で暮らして分からないので、地域のことを教えて下さい」と声をかけていました。地域の方が立ち寄り「ここの商店街は当時は賑わっていて、良かったよ」「お祭りが盛んでここはいいよ」なんて話が自然と広がっていました。

みんなの話を聞いていると、なんだかためらいも飛んでいき、どんどんアイデアが生まれてきました。駄菓子などを食べながらゆっくりできる場と、地域の話ができる場を混ぜるともっと面白くなりそう!と自分も意見を出すようになりました。

 

私は何をやるときも一人でやろうとして周りに協力をお願い出来ないところがあります。一人でやるからもんもんとし、挙げ句の果てに「なんで手伝ってくれないんだ」と思うこともありました。しかし、研修ではお互いの良さを認めて、強みを自覚しあい、建設的に意見を言い合う。僕もその一員として実行してみて、仲間でやる仕事って楽しい!と思えるようになりました。

 

それだけではありません、プロジェクト終了後、自分の事務所に戻って60人の仲間を見たときに、さらに変化を実感しました。職種に関係なく、地域で働く仲間がこんなにたくさんいたんだ!!それぞれ色が違うからいいんだと。「違い」がネガティブなものではなく、よりよい物に見えました。こんな自分がいても良い、「違い」を認めて、お互いの共通するところにともに歩んでいる。そう思うと、仲間に対して感謝の気持ちがわくようになりました。

 

3.訪問看護の枠を超えて

 プロジェクトを通じて、自分が、訪問看護の仕事も竹田地区での活動も実は繋がっていて「地域看護」というもっと広い視点で両方をみているのだと気づきました。

そして、訪問看護の利用者さんとの何気ない会話の中でも普段の暮らしでは何を大事にされているのか、その方の人柄、歴史、生活、文化にも目を向けることができるようになりました。また、職場の同僚や先輩、身近な地域との関わり方も変わりました。

 

職場の先輩が住んでいる地域は公民館活動が活発です。僕はそこに住んではいないのですが、地域の集まりに入れてもらい、地区の子どもたちと蛍を見に行ったり、新年会に参加させてもらったりするようになりました。仲間や地域に対する認識の変化は僕の毎日を少しずつ変えていっています。

 

日常の何気ない関わりや会話から緩やかに繋がっていくことで、町の人が「その人らしく」暮らす、をサポートするコミュニティナースのあり方。まだ始まったばかりですが、一歩ずつ前進していることを感じる毎日です。

 

◆こんな人にプロジェクトはオススメ

 地域の問題やニーズに対して、自分はこう感じる!だけではなく、他者からの意見も謙虚に聞ける方、一緒に悩んだり考えたりする姿勢を持てる方なら、どんな職種でもオススメできるプロジェクトです。

 

第6期の仲間には助産師やリハ職の方などもいましたが、実は職種では覚えておらず、行動的な方、静かだけど内に秘める気持ちが熱い方、…などと見ていました。共通しているのは仲間を大事にする、お互いを気に掛け合えるメンバーであったと思います。

職種にとらわれず、自分を進化させてくれる、そんな仲間と出会えた僕は幸せ者です。このきっかけをみんなとも共有したいですね。