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インタビュー記事掲載|「へだてる線を消して、つながる線を引いていく」


矢田が第1期を卒業した、島根県雲南市の人材育成事業「幸雲南塾」の第4期卒業生でもあり、島根県浜田市の市議会議員の三浦ひろきさんとの対談記事を掲載いただきました。

「へだてる線を消して、つながる線を引いていく」

まちづくりには欠かせないキーワードの一つが「コミュニティ」。深く結びついている人々の集まりを意味します。地方社会においても、人との関係性が希薄になりつつある今日。なぜ、つながることが大事なのか。雲南市を拠点に全国でコミュニティナースプロジェクトを展開する矢田明子さんとお話をさせていただきながら考えてみました。

社会に線は引かれていない

三浦:浜田市では、今、まちづくり機能の強化を目的に公民館のコミュニティセンター化が議論されています。コミュニティ+センター。つながりを育む場所と僕は解釈しています。コミュニティナースは、コミュニティ+ナース。つながりを生み出すナースという感じでしょうか。いろんなところで耳にする、このコミュニティという言葉を、矢田さんはどう捉えているのかなと。

矢田:コミュ二ティという言葉は、以前は一定の枠組みとして捉えていましたが、最近、そういう「枠」は意識しなくなりましたね。今、おっちラボで、市民財団の立ち上げに向けて動いています。今の雲南市は6町村が合併してできたまちですが、全地域から準備に加わってもらっています。「おらがまち」という境界を越えて、みんなが共感できる部分を切り口にして話し合います。例えば、子どもを応援したいとA地域のaさんと、子どもを応援したいB地域のbさんですよって紹介すると、縄張り意識みたいなコミュニケーションは生まれません。共通のキーワードを作るんです。自分が意識しているコミュニティの定義をいかにオーバーラップさせるかということは、意識して取り組んできました。それは、コミュニティナースプロジェクトでも一緒。企業と行政、地方と都市とかそういう感じで括ることはしません。あなたも私も同じコミュニティにいるんですという前提で話します。

三浦:僕がまちに関わる時に意識しているのは、「分解」と「溶解」。まずはそこに何があるかをよく見て(=分解)、そのあとに、つなげていく(=溶解)。まちの要素をつぶさに観察して、そのあとは全体で捉えていこうみたいな感じです。価値観でものごとを括ると、性や年齢や地域を超えてのつながりが生まれます。コーディネートとか事業づくりにはそういう観点が大事だと思っています。

矢田:本質的には自分たちにわかりやすく線を引いているだけで、社会そのものに「線」なんてひかれていません。コミュニティナースの取り組みでは、社会にそんな「線」がないということを体感している人たちがたくさんいますよ。

 

おせっかいの連鎖を生み出す

三浦:コミュニティナースが、実際に地域の人や地域そのものと接点をもつことで、どんなことが起こっていくんですか? 起こしていこうとしているんですか?

矢田:スタッフが関わっていた町の人がコミュニティナースになっていくというケースはいっぱいあります。「実は隣のおばあさんが気になるんだけど•••」「●●さんもできますよ!声かけてみてくださいよ!」といった具合で、こちらが関わる過程で、関わった人がナース化していくという。それから、自分が誰かを気にかけるだけではなくて、自分も誰かに気にかけてもらうという展開を見ています。「おせっかい」というキーワードをつくったんですが、思いやりに基づいた気持ちの良いおせっかいを、日常的にみんながお互いにやりあっている、当たり前に起きているまちを目指しているんです。こちらの踏み込んだおせっかいを嫌がられたら、引けばいいんです。

三浦:自分から踏み込むって最初は勇気もいるでしょうけど、そのままにしておいたら、その先に関係性は生まれないことがほとんど。情報発信も一緒で、伝わってないものは、結局、ないことと同じになってしまう。それをきちんと見つけていくって大事なことだと思います。受け身より自発。関わった人がコミュニティナースになるというのは、仕組みが広がっていく明らかな兆しですね。でも、社会に組み込むのは簡単なことではないですよね。

矢田:コミュニティナースを3万人つくるという目標をたてています。コミュニティナーシングを仕事として(対価を得ている人もそうでない人も)行う人を3万人つくったら、社会のインフラ、ブランドとして日本の中に定着していると言えるんじゃないかと。3万人はヤクルトレディの数です(※矢田さんは元ヤクルトレディ)。ヤクルトレディ知っていますか?と聞くと、10人中8人は名前を知っています。4人は見かけたことがある。2人はヤクルトレディからヤクルトを買ったことがあると。これを一旦当たり前の基準とすると、コミュニティナースも3万人になれば•••。志のある自治体、企業、市民団体、もちろん個人の方も一緒になって、3万人というインフラをつくろう、日本のブランドにしようとチャレンジ中です。郵便局や駅の職員さんもコミュニティナースになっています。職員さん同士だけでなく、お客さんにも関わっていくんです。喜ばれることで湧いてくる自分の喜びみたいなものをご自身のエンジンにされておられるのを感じますよ。人はみんな本能的に持っていると思います、そういう気持ちを。このプロジェクトは、本来そういう優しさを発揮していいんですってことを、参画している人たちがお互いに確認し合う後ろ盾みたいな役割も果たしています。

三浦:コミュニティナースプロジェクト自体が素晴らしい一つのコミュニティだなと。自分のやっていることに確信が持てると最強です。そういう場所に身を置いていると、気持ちが良いし、楽しいし、元気がでますよね。

矢田:得意なことというかできる範囲でやれるおせっかいでいいんです。得意なことで感謝されるんですから、うれしいですよね。そうすると、人は明るくなります。みんな嬉しいって最高じゃないですか。こっちかあっちか、どっちがいいとかそうじゃないかとか。どっちも取れる第三の道はどうやったらつくれるだろうって、チーム全員が知恵と経験と人脈を出し合えば見えてくるんですよ、どっちも取れる道が。たどり着くまでは長いかもしれないけど、すごくおもしろい仕事をしているなと思ってます。

三浦:自分たちの暮らしの中で、つながりの線が双方向にたくさん引かれていくとよいですよね、超複雑に。つながりが増えれば、生まれるパワーも必ず大きくなる。できることも増える。コミュニティは、地域の素地としてやっぱり大事だと思います。改めて、コミュ二ティナースは、秘められたまちの原動力を見つけるのに有効な手法だと感じました。

 


三浦ひろき さん

1980年1月29日、島根県浜田市生まれ。40歳
国府保育園→松原小学校→浜田第一中学校→浜田高校→早稲田大学政治経済学部
国会議員秘書、国際NGO職員を経て、浜田市へUターン。NPO法人てごねっと石見のスタッフとして、商店会活性化事業や創業支援事業などに携わる。
2014年に株式会社シマネプロモーションを設立し、県内企業や自治体の事業・商品開発支援を行う。

▷株式会社シマネプロモーション
shimapro.net
▷NPO法人てごねっと石見 理事
tegonet.net
▷島根大学COC+事業 キャリアプランナー
allshimane.shimane-u.ac.jp
▷しまコトアカデミー メンター
shimakoto.com