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ガス事業者とコミュニティナースが共に取り組む“さとづくり”


2021.4.9

コミュニティナースのストーリー
vol.06_西部ガス株式会社

全国には約200社のガス事業者があります。
福岡県福岡市に本社を置き、全国4番目の規模で、約1300名の従業員がいる『西部ガス』が今、コミュニティナースの導入に向けたチャレンジを行っています。

そのはじまりは、一人の女性社員の“直感”でした。
「ガス事業者が、コミュニティナース?」そう思った方、ぜひご一読ください。
同社暮らしまちづくり推進グループの馬場愛里さん、成富倫子さんにお話をお聞きしました。

インフラ事業者にもコミュニティナースの役割ができる

——はじめに、なぜコミュニティナースに興味をもったのか、教えていただけますか。

馬場:当社はガスを製造・供給する事業をしていて、地域密着型の会社なんです。その前提のもと、ガス事業のほかに、タウンマネジメントやまちづくりの事業を始めました。これから会社として、それをステップアップ・レベルアップしたい。そう考えていました。


現在コミュニティナースにまつわる事業を担当している、馬場愛里さん

 

成富:当社は企業理念の一つに「地域貢献」を掲げていて、「吾々は地域に因って立ち地域と共に栄える」という社訓があります。地域に入るにあたり、上司と「健康がキーワードになるね」と話していました。私たちが地域でできることを探したとき、真っ先に浮かんだのは「安心・安全・健康」で、安心・安全には既に着手していたからです。

「地域と共に」の最大公約数である健康分野は大きなテーマで、今からチャレンジするにはいいなと。健康の下支えになる活動をしたい、と考えていました。それに、SDGsの目標11である「住み続けられるまちづくりを」を考えても、コミュニティナースと当社の活動はマッチしています。そこで2020年3月、九州地区で健康的なまちづくりを推進することを目的に業務協力協定を締結しました(参考 リンク:http://www.saibugas.co.jp/info/kouhou/htmls/nr1219.htm)。

 

西部ガスとコミュニティナースを結びつけた、成富倫子さん。
現在は産休中で2022年1月に復帰予定

 

——コミュニティナースにはどうやって出会ったのでしょうか。

成富:日経新聞で連載されていた矢田明子さんの記事をたまたま見つけたんです。私は当時、暮らしまちづくり推進グループの部署に配属されたばかりで、まちづくり事業をレベルアップさせるために何ができるのだろうと、情報収集をしていました。

新聞の見出しに「地域へ飛び出す」「住民を見守る」とあり、惹かれて記事を読んでみました。まちづくり業務と親和性が高いと感じ、ますます興味をもって、矢田さんの著書『コミュニティナース』も購入し、穴があく程読みましたね(笑)。特に印象的だったのは、島根で水道の検針員がコミュニティナースの役割をしていたこと。当グループ会社でも検針員が地域の各家庭をまわっているので、イメージしやすく「インフラ事業者にもそういうことができるんだ!」と感じました。

直感でビビッときて、「矢田さんに会いに行きたい」と上司に相談。背中を押してもらい、2019年5月、東京で開催されたミートアップイベント「コミュニティナースとつくるこれからの健康とビジネス」に参加しました。

——それがきっかけになったのですね。

成富:はい。矢田さんは人を惹きつけるパワーのある方で、コミュニティナースにも可能性を感じました。イベント後に改めて『コミュニティナースカンパニー』の方にお会いして、こちらの考えていることなどをお伝えしたんです。共感してくださり「ぜひ一緒に取り組みましょう」という心強い回答をいただき、2019年のうちに「コミュニティナースプロジェクト 第9期」を上司と共に聴講生として受講しました。

成富さんが参加した「コミュニティナースプロジェクト 第9期」での集合写真

 

受講して最も衝撃だったのは、病院勤務が長く「地域に出たい」と考えている医療従事者の方がたくさん参加されていたことです。そういう方たちと接する機会はなかったので「こんなにいらっしゃるんだ……」と驚きでした。

また、受講後に雲南市でコミュニティナースの宮本裕司さんにお会いしたときにも、「健康づくりはまちづくり。僕がやりたいのはまちづくりなんです」というお話が印象的で、地域のことを考えている姿と熱意に感銘を受けました。

——馬場さんも「コミュニティナースプロジェクト」を受講されたそうですね。

馬場:私は2020年から暮らしまちづくり推進グループに配属され、その年に雲南市で開催された「コミュニティナース実践講座@雲南」を受講しました。参加してみて感じたのは、素敵な思いを持って地域に飛び出し、良いおせっかいを焼こうとしている方がこんなにいらっしゃるんだということです。私が地域でやろうとしていることは間違っていないなと、とても励まされ、背中を押された気がしました。

「コミュニティナース実践講座@雲南」を受講中の馬場さん

 

「日の里団地」で、地域のみなさんと一緒に“さとづくり”

——業務協力協定とは、具体的に何をすることになったのですか。

馬場:福岡で共に活動できないかと活動の場を探し、福岡県宗像市にある「日の里団地」のプロジェクトがコミュニティナースの活動にマッチするのではと、協働をご提案しました。日の里地区は高齢化率が35%をこえる地域です。西部ガスはほかの企業さまと一緒に、旧48号棟の30室を改修した生活利便施設の企画や運営などに携わっています。

48号棟は1階と2階部分を地域に開き、ブリュワリー(クラフトビール醸造所)、コミュニティカフェ、コミュニティキッチン、DIY工房を運営する予定です。2021年5月4日に正式にオープンします。

この48号棟での活動に、コミュニティナースの方に関わっていただけないかなと考えています。例えばコミュニティカフェにコミュニティナースの方がいたり、この場所を拠点に活動していたり……。この48号棟全体が、地域のみなさんが集ってゆっくりと話せる、心が落ち着く場所になれたらいいなと思っています。

コミュニティカフェのメニューやレシピは、地域に住む大人や中学生と検討していて、まさに今「地域に本当に欲しい機能」を一緒につくっています。帰りたくなる場所をつくっていこうと。

成富:ガス会社がこういった活動をしていると知って驚く方がいらっしゃるかもしれませんが、矢田さんは当社の企業CMシリーズを見て、「社員さんたちがまさにコミュニティナースだ!」と感じたそうです(映像はこちら )。「暮らしの役に立つなら、なんでも私たちの仕事です」「地域の安心を見守ることも、私たちの大切な仕事です」とアナウンスが入ります。それに当社では日頃から「おせっかいをしなさい」「隣の人に声をかけましょう」などと上司によく言われます。そういう社風なんです。

——オープンに向けてどのような準備をしているのですか。

馬場:現在、48号棟にどういう機能をもたせ、地域の方々にどう使っていただくかを考えています。私の目標は、このプロジェクトに携わる方々には是非コミュニティナースのマインドをもって活動していただけたらということです。もうすでに、日の里にはそういう方々がたくさんいらっしゃいます。

日の里でコミュニティナースの考え方を広げ、地域のみなさん、行政やUR、企業と一緒に“さとづくり”をして、新規事業や課題解決のモデルづくりもしたいですね。今、日の里で地域に根付いて活動してくださるコミュニティナースを探しているところです。

成富:コミュニティナースの活動は、やさしくてあたたかいと感じています。私は現在育休中ですが、2022年1月に復帰します。私の夢は、当社の社員がコミュニティナースのマインドをもつこと。みんながそういう心をもって動けばきっと役に立ちますし、会社が強くなります。そして福岡から、全国に広まったらいいですね。

 

取材・文:小久保よしの
写真提供:西部ガス、コミュニティナースカンパニー