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イベントレポート|地域共生社会のはじめかた
〜制度と実践から考えよう〜[前編]


イベントレポート
2020.09.27


誰もが誰かを支え、誰かに支えられて生きている――そんな気づきから生まれた「地域共生社会」というコンセプト。その実現に向けた大きな一歩となる「重層的支援体制整備事業」が2021年4月から始まります。

介護・障害・子ども・生活困窮などの困りごとを全部まるっと対象にし、医療・介護・福祉分野に留まらず、まちづくりや防災、教育などの多分野とも連携して、暮らしのなかに「人と人とのつながり」というセーフティネットを広げることをめざす事業です。

これって、人とつながり、まちを元気にするコミュニティナースの実践と、どこか似ていませんか?

そう、この「重層的支援体制整備事業」は、地域共生社会という大きなビジョンに向かって、コミュニティナースなど地域のさまざまな実践や、自治体の現場の声を参考にして、ボトムアップで生みだされた制度なのです。

Community Nurse Companyでは、この制度をつくった厚生労働省の國信綾希さんと、千葉県松戸市で人と人とのつながりを通してまちを元気にする活動を行っている松村大地さんをゲストにお迎えして、制度と実践が両輪となって地域共生社会を実現する未来が見えてくるオンラインイベントを2020年8月30日に開催しました。この記事(イベントレポート前編)では、イベント前半の事業説明と、関連する地域の実践2例をご紹介します。


◉地域共生社会のはじめかた〜制度と実践から考えよう〜[前編]

もくじ

1.スピーカー紹介
2.制度解説 地域共生社会ってなんだろう?|國信綾希さん
3.地域での実践①
つながりを生み出す「多面性をもつ地域づくり」|千葉県松戸市・松村大地さん
4.地域での実践②
誰もがコミュニティナースになる「地域おせっかい会議」|島根県雲南市・矢田明子さん

*[後編]は近日公開予定! イベントトークと参加者からの質問に答えます。


 

1.スピーカー紹介


國信 綾希さん
厚生労働省社会・援護局地域福祉課 課長補佐
長野県上田市出身、7人家族で生まれ育ったおじいちゃん・おばあちゃん子。入省9年目、今年から事業をマネジメントする立場になり戸惑うことも。もっと顔を出して皆さんと対話したり、発信していきたいと思っています!


松村 大地さん
特定非営利活動法人まつどNPO協議会 第2層生活支援コーディネーター
一般社団法人まつど地域共生プロジェクト(Mi-Project) 理事長
理学療法士
小中高と野球部で、理学療法士になるべくしてなりました。誰もが最期の時を笑って迎えられるまちをつくるため、千葉県松戸市で「人」をつなぐコーディネーターをしています。


矢田 明子
Community Nurse Company 株式会社 代表
コミュニティナース
暮らしの動線に入るコミュニティナース活動を魚屋の店先から始め、あれよあれよという間に全国に仲間が増えました。島根県雲南市で今日も元気に活動中!


佐藤 満さん
雲南市 ソーシャルチャレンジ マネージャー
高齢化率36.5%の課題先進地である雲南市を「日本一住民活動がさかんなまち」にした立役者。住民のやりたい!を行政の立場から応援します。

進行

漆畑 宗介さん
コミュニティナースプロジェクト9期修了生
コミュニティドクター / 王子生協病院 家庭医療専門医
自らが住む団地の住民がいきいきと暮らせるよう、お祭りに参加したり健康相談などを行なっている。


 

2.【制度解説】地域共生社会ってなんだろう?|國信綾希さん

「人は誰しも、暮らしのなかで互いに支え、支えられている。地域共生社会は、そのことに立ち戻ろうというビジョン」と國信さん。人と人とが支え合う関係を起点として、地域の生活と、社会・経済活動がつながって循環する社会のコンセプトです。農林・環境・産業・交通など各省庁にまたがるものとして、厚生労働省が2015年より提唱し、2016年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」にその実現が盛り込まれ、制度設計が進められてきました。

 

2017年の社会福祉法改正を経て、208の市町村でモデル事業がスタート。そこで自治体内の会計処理の難しさなど課題が見えてきましたが、國信さんは、地域に新しい希望が芽吹いていることにも気がついたのです。

 

地縁・血縁・社縁より強い! 「この人とつながりたい」から生まれる第四の縁

かつては、地縁・血縁・社縁といったつながりがセーフティネットとなって、制度ですくいとれないさまざまな困りごとを抱える個人や家族を支えていました。今はその3つの縁が弱くなった結果、制度の隙間にこぼれ落ちてしまう人が増えています。

そんななか、興味・関心や思いを共有する人と出会うために、多様な参加やつながりの機会を意図して生み出して、「この人とつながりたい」「この人を支えたい」という気持ちでつながり続ける人たちもまた、地域に生まれていたのです。そのような「第四の縁」こそが、國信さんが見つけた現代社会の希望でした。

 

「課題解決」と「つながりづくり」の両輪で行う伴走型支援

國信さんはこの第四の縁をヒントに、セーフティネットの基盤に「人と人とのつながり」を置き、さらに「つながりをつくり、つながり続ける支援」を個別支援と組み合わせて、新しい事業の対人支援のアイデアを組み立てていきました。

 

この支援は、もちろん、上から目線で「こうしなさい」と言うような一方的なかたちでは継続できません。長くつきあえる友人や家族との関係のように、伴走することが基本です。そうすることで、あるときは支えられていた人が別の場面ではほかの人を支えるような、「支え合いの循環」を起こすことをめざします。

 

地域共生社会を具体化する「重層型支援体制整備事業」

このような対人支援を実現するために國信さんたちが用意したのが、「重層型支援体制整備事業」のパッケージです。
かいつまんで説明すると、このようになります。

・次の3つの支援を一体的に提供する

1.市町村による断らない相談支援
2.社会とのつながりや参加の支援
3.地域づくりに向けた支援

・介護、障害、子ども、生活困窮の4分野を一体的に扱う

・この4分野に対する交付金と介護保険料がまとめて市町村の一般会計に入り、この事業の予算として支出できる

支援体制の具体的なイメージや、このような事例に活用してほしいという具体例は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。國信さん自慢のチームが出演している動画もありますので、ぜひご参考にしてください。

○厚生労働省ウェブサイト


 

3.地域での実践①
つながりを生み出す「多面性をもつ地域づくり」|千葉県松戸市・松村大地さん

千葉県松戸市で地域づくりに取り組む松村大地さん。趣味の活動や防犯など市民活動を支援する「コミュニティコーディネーター」と、高齢者の生活を支援する「生活支援コーディネーター」という、2つの顔を持っています。それらのネットワークをつなげる「あいだの場」として、まつど暮らしの保健室もつくりました。市民の健康相談などにのったり、健康講座を出前したりしています。

 

「セーフティネットに市民活動という選択肢を追加したい」と松村さんは言います。社会保障・住民自治・サービスという三層のセーフティネットがこれまであったけれど、そこにもう1つの層「市民活動」を追加したら、網の目がもっと細かくなって、もっと多くの人たちをすくいとれる。選択肢が増えることで、「バトンパスを回すように、できる人ができるところをやり、楽しそうだからやる人、必要だからやる人というように、多面的かつ立体的なセーフティネットができる」と松村さん。


 

4.地域での実践②
誰もがコミュニティナースになる「地域おせっかい会議」|島根県雲南市・矢田明子さん

「講座の修了生や医療資格者だけでなく、誰でもコミュニティナースになることができればもっといい社会になる」と話す矢田さんが率いるコミュニティナースカンパニーが、2019年から展開している「地域おせっかい会議」。地域ケア会議にもっといろいろな人を呼んで、もっといろいろな困りごとに対応できるようにしよう!という試みです。参加者は、まわりで困っている人を手助けしたいけど、これまで一歩が踏み出せなかったという「おせっかいマインド」を持つ普通の人たち。郵便局員さんやスナックのママさんなど、30人ほどの市民がメンバーに登録しています。

 

イベント中、矢田さんの隣でお酒を酌み交わしていたおじいさんも、地域おせっかい会議でおせっかいをした人の1人でした。長年のお連れ合いであるおばあさんが入所していた施設が、新型コロナウイルス感染症の流行で面会禁止に。そこで、ITが得意なおせっかい会議のメンバーがテレビ電話でつなぐというおせっかいを考えます。その話を施設に持ち込んだところ、「そんなに会いたいなら……」と、なんと、施設の庭で2人を対面させてくれたのです。おせっかいがおせっかいを呼んだ出来事でした。おばあさんが亡くなった今は、カンパニーの拠点に思い出話をしに通ってくるおじいさんは、拠点の庭中の草取りをしてくれます。「私たちはおじいさんにおせっかいをしているけれど、おじいさんも私たちが暮らしやすいようにとおせっかいをしてくれる」と矢田さんが語るように、互いに支え合う地域づくりに向けて着実に歩みを進めています。

「地域おせっかい会議はおそらく地域に大きな影響を与えていく」と、コミュニティナースの活動を行政から見守ってきた佐藤満さんは言います。そして、おせっかい会議は行政と市民の間にある存在だが、まだその立ち位置が定まっていない、でも、「おそらく市民の側に寄せて行くのがいいんだろうな」とポツリ。地域共生社会のビジョンに向かって国や自治体という「公」と私たち「民」が共に歩むとき、その呟きがヒントになるような気がしました。

[前編終了]


[後編]では、200名の参加者を交えたトークの様子をお伝えします!
チャットやアンケートに寄せられたご質問も抜粋してお答えします。


グラフィックレコーディング:石井麗子